本当の幼保小交流~子どものつぶやきから始める~

「このクレヨンを幼稚園や保育園の子たちに試してもらいたい」という子どもの声がきっかけで、峯小学校の5年1組の児童が来園し、自分たちで作ったクレヨンを園児たちに披露し、お絵かきを体験させてくれました。野菜や果物、落ち葉など自然素材をすりつぶして溶かしたロウに混ぜ込んでクレヨンにしたものを園児たちが手に取り塗り絵をしました。

5年生と年長児の交流、4月からは6年生と1年生という黄金の組み合わせで、コロナ禍でなかなかできなかった幼保小の交流ですが、年間で計画されていたわけではなく、私たち保育者が大切にしている「子どものつぶやきから保育・教育を組み立てる」ことを5年生の担任の先生が実践されていることが何より嬉しかったのです。

交流の後、担任の先生と立ち話をしました。元々は総合の時間で『地域の人とつながろう』をテーマに取り組んで来られたそうで、保土ケ谷産の野菜を調べるうちに、野菜は捨てるところはない、フードロスをなくすためにはというSDGsの学びへと発展していったグループもあれば、その色素に着眼して顔料を作り、クレヨンづくりへと発展したグループもあったそうです。

小学校における総合の時間は担任のアイディア・・・閃きや想像(創造)力、そして子どもたちと一緒に実現可能性を探る力が求められるのだと思っています。教師が先走りすることなく、あくまでも子どもの姿を冷静に捉え、ココっというときに『提案・提供』することができる。子どもと一緒に問題解決できる。これまでの学校教育の『指示・命令』とは異なるアプローチです。

幼児教育・保育で大切にしてきたことが小学校になかなかつながらない、子どもたちが小学校の先生との距離感に悩むなどの声が聞かれる中、当初計画にはなかった「園を訪れ、園児たちに自分たちの作ったクレヨンの試し描きをしてもらう」という子どもたちの思いを実現させた5年1組担任の先生を尊敬します。

コロナ禍で計画されたものができなかったという経験を経て、これまでの既成概念にとらわれない教育活動の組み立て方の芽が育っていることを実感します。しなやかにのびのびと教師・保育者の「子どもたちと一緒にやってみたい」を応援できるような園と地域でありたいものです。

園長 西山俊太郎