8月、我が家では4番目の次男が一人暮らしをはじめ、結婚32年目にして再び夫婦2人の生活が始まりました。肩の荷が下りたというより、真里先生は寂しいと思っているらしく、週末に集まってくる子どもたちとその家族が待ち遠しい毎日を過ごしていました。
8月の初旬、園庭のパセリの葉っぱに白い小さな卵を見つけた園児が「園長先生、来て!」と呼びに来たので行ってみると卵の他に、黒い2ミリぐらいの幼虫もついていました。子どもたちから『蝶おばさん』と呼ばれている保護者の方が、「園長先生、これはキアゲハの幼虫です。」と教えてくれました。
その日から、虫かごに入れて観察を始めました。小さいうちに何匹か上手く育てられず、蝶おばさんからは、「卵が成虫になる確率は、、、」という自然の過酷さも学びました。育てていた4匹の中で3匹がモリモリ葉っぱを食べる毎日。餌不足の幼稚園、蝶おばさんのご主人が自宅からパセリ畑のプランターを持ってきてくれて、はらぺこあおむしのようにまるまる太ったきれいな模様の浮き出た立派な幼虫になりました。
毎日、自宅に持ち帰り、真里先生は朝昼晩パセリを入れ替え、シートの交換をして子育て期そのものの彼女の姿を見ながら、〝さすが、お母さん〟お母さんは24時間営業だけど、お父さんはいい加減だなあと改めて反省。「動かなくなったらさなぎになります」と蝶おばさん。木の枝を入れてそこにとまれるようにしました。1匹は虫かごの内壁で、2匹目は木の枝で、3匹目は天井の蓋でさなぎになりました。
なかなか動かないさなぎ、「死んじゃったのかなあ」と言うと、じっと観察していた真里先生は「時々ピクッて動いてる」「背中が黒くなってきた」と。ある朝、いつものように自宅から園に向かい、園に着いて紙袋から虫かごを出すと「あーっ!」と彼女。移動している4,5分の間に蝶になりました。2匹目、3匹目もさなぎから出る瞬間を見ることができず残念でした。
しかし、大きなプレゼント。幼稚園が再開した8月25日の朝、3匹目が蝶になりました。お集まりで蝶になるまでの話と、大空に飛び立つ蝶をみんなで見送ることができました。つかの間の『子育て』をもらいました、「ありがとう、はらぺこあおむし」。
我が家はというと、8月中旬には2人目の出産を控えた次女家族が実家に戻ってきて、つかの間の老夫婦暮らしは一旦ストップ。この原稿を書いていると娘から連絡が。「産まれたよ!」。3人の孫のばーば・じーじになりました。それぞれの家族の歩みには小さな幸せがあります。そんなことを思いながら、2学期もどうぞよろしくおねがいします。
園長 西山俊太郎